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やまぶき鉄砲

ブログ > 職人情話短編 > やまぶき鉄砲
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天然素材から作られた自然がくれた玩具、山吹鉄砲。構造はいたって簡単で、竹で作った水鉄砲と原理は同じ、山吹の髄(スポンジのような白い茎)を弾にして細い竹の筒に詰めて弾を空気圧で押し出して山吹の芯を飛ばす竹製の鉄砲です。

昔から長い間、生活に関わっているものに「竹」があります。皆さんの身の回りを見渡して見ると必ず何処かに竹があると思います。小さなものは菓子などについている楊枝、団子の串、竹の箸、今風なら竹炭、など以外とあるものです。
竹、竹といっても種類も多いがその中でも篠竹や矢竹を利用した工作物で縁日でしか手に入らなかった自然がくれた玩具、やまぶき鉄砲の話です。
「ポン・パン」なんともいえない濁りの無い軽い音、想いだしませんか?縁日の風景。朝早くに行くとその場で竹を加工しながらまだ作っている。その作るところを観察するのも趣味でした。企業秘密の加工技術を盗み観て、自分でも同じものを作るために、でも、最後は出来たものを買って遊んでいる自分がいました。

ざっざっと鋸を引く音が、外に聞こえる。入り口には長さと太さの違う竹が沢山、立てかけてある。
季節は師走、ここは、やまぶき鉄砲を作っている三瓶さんの居住い。
正月からさくらの頃まで関東一円の露店で販売する商品の作成に追われている日々が続く・・・

「おふく、新しい形の山吹鉄砲を売るために材料も多く仕入れたが思っていたより手間がかかるな」
「なに、言ってるだ。手間がかかるのは判っていたでねえか」
「あいよ、判っちゃいるのになさけねぇな。だがよ、これ、まだ他所じゃねぇもんな」
「うんだ」
「高くも売れるよな」
「とうちゃんの考えたもんだ。間違いねぇだ」
「あぁ、あんがとよ」
「もっと、たくさん作らないとな」
※ 当時の普通のやまぶき鉄砲は単発式の簡単構造の物が主流となっていました。同業者も多く、塗りや補強の為の針金などで飾りを付けて他の露店のとの差別化を工夫により、行っていました。
そんな、やまぶき鉄砲に旋風を巻き起こしたのが、連発式の物でした。完成度も高く、竹細工でこんなことも出来るのかと驚いたものでした。
当然、値段も高くなかなかすぐには買うことが出来ず憧れの玩具に入っていました。
やっと、買うことが出来ても構造に無理がある為か、遊べるのは二、三日程度でどこかしら壊れてしまい耐久性はありませんでしたが十分満足できました。

「じゃまするょ」
「こりゃぁ、ご隠居」
「師走はどうだい?」
「こんだぁ(来年)、新物をかけようとこんなのを作っているんだが、ご隠居どんなあんべぇかな」
「どれどれ、ほー、こりゃまた、なんだか複雑な作りだね」
「今までの形だけじゃいけねと、手を入れてみたんでさぁ」
「で、どういう風に使うんだい」
「ここの、蓮根みたいなとこに、こうやって弾(山吹の芯)をつめて、こんな風に蓮根のような弾倉を回しゃぁ、後は続けて打つことができるんでさぁ」
「これは、世辞ぬきでよく出来てるね」
「ご隠居のお墨付きをもらやぁ安心だ」
「だがょ、三瓶さんこれ、いくらで売るんだぃ」
「ご隠居、そこなんだ」
「まだ、決まんねえんでさぁ、作る手間かかるし・・・」
「三瓶さん、手間かかっても商売の相手は子供だ。三百円がいいとこだろぅ」
「ご隠居の値踏みならまちがいねぇ、三百円だ」
「おふく、きまりだ、いいな」
「あいよ」
「ご隠居、世話になるばかりですまねえだ」
「おふくさん、そんなこたぁねえよ」
「おふくさん、それはなんだね」
「あまった、竹のきれはしで鳥笛を作ってるだ」
「ほー、それも面白いな」
「これも、細工してなぁ、こんなに鳴るだ」

おふくは、作りたての鳥笛を吹いてご隠居に聞かせた。

「いい音だ、鳥の鳴き声のように音が出るね」
「ご隠居、こんなのもあるだ」

もう一つの竹笛に、水を少し入れて吹いてみる。

「これもすごいな、音が鳥のさえずりのように聞こえる」

※ 鳥笛、当時、観光地などでも盛んに売られていた陶器で作られていた物を、笛の素材を竹にしたもので水を入れて吹くと空気の振動につれ、音が揺れる水でさえぎられ、さも、鳥のさえずりのように聞こえる笛がありました。水を入れないでも音は出ますが、ただの連続した音にしかなりません。また、竹の性質を利用し、やまぶき鉄砲の技術をそのまま応用した、竹笛(縦笛)の先のほうにピストンのようなものをつけて音階を変えることが出来る物もありました。

「こりゃ、まね物だが、余り物でこせぇたから安く売るだ」
「三瓶さん、おふくさん、こうゆうのもあると、張った店の客づきも良くなるよ」

年が開け、諏訪神社境内の同業露店の中でも新作を持った露店は人気がありました。最新式の連発式のものは目を引いていましたし、鳥笛も実演していたので、いい音が響いていますから当然、訪れる人々の気を引き値段も安かったのもあり鳥笛はよく売れていました。
当の、連発式のやまぶき鉄砲は、やはり子供には高額商品ですから笛のようには売れてはいませんでした。

ただ、子供のあいだだけではなく大人も、この連発式のやまぶき鉄砲には見とれていました。筆者も、お年玉で縁日の最終日に少し安くしてもらって購入しました。縁日の開かれている期間、毎日、朝、昼、晩と毎日通いつめているものだから、当然、仲も良くなります。その、恩恵を受けたのでした。
当の、やまぶき鉄砲も早々に、他の玩具などに影響され縁日から消えてしまいました。
近年、やまぶき鉄砲の復活版で縁日に登場したと何かの雑誌で見たことがありましたが、連発式などは無く普通の単発式ものが並べてありましたが、押す部分がプラスチックで出来ていたりで、何か別の物のように感じました。
これも、時代でしょうか?

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