十徳ナイフ

 

今の時代なら絶対に無理な話! 子供が「ナイフ」を持つなどあり得ないことですね。友達に怪我でもさせたら・・・、自分でも怪我したら・・・、等々、親も回りも黙っていないです。それがあたりまでしょう。しかしです。今とは比較のしょうも無い環境、昔はとんでもなく違った感覚でした。鉛筆もナイフで削っていた、鉛筆削りなど学校の教室にしかない時代です。普通の子供は「ボンナイフ※呼び名」、「肥後守※ひごのかみ・切り出しナイフ」、「折りたたみナイフ」等々、自然な知識と環境で普通に色々使い分けていた。

 

そんな時代の憧れでもあった「十徳ナイフ」は縁日でしか買うことが出来ず。また、それなりの小遣いを持って行かないと変えない、子供から見たら「高級品」でした。名前のごとく「十徳・じゅっとく」、「十」の「得」が備わっている便利な「ナイフ」で、香具師のおじさんがデモンストレーションを色々と見せてくれる。私はその機能の中でもとりわけ興味を持っていたのが「ガラス切り」の部分でした。

 

子供からしたら「ガラス」が切れるなど信じられないし、しれも、本体の「ナイフ」の中の一つの機能としてして付いていること。おじさんがガラスの破片を手に持ち、フリーハンドで「シャー」と真すぐこする。そして、おもむろにそのガラスの両端を持って演出で「フッ」と息を吹きかけると「パチッ」と音がして真っ二つに分かれる。見ている人たちに驚愕の声が起きる。次は肝心の「ナイフ」の部分、ナイフの刃を上向きにし片手で持ち、紙をもう片方の手でナイフの刃にあてがうように紙を下へ降ろすと、何の抵抗もなく紙は切れて行く。

 

このことだけで「おどろき」に浸っている。そこへ「一つちょうだい」の声が掛かると、後は群集心理で「我も、我も」と本当に飛ぶように売れる。しかし、子供には買えないので眺めるだけでした。しかし、夜になって親戚の人が遊びに来て一緒に縁日に出かけると案内するふりをしながら欲しいものの「露店」へ誘導し、その演出が始まるのを待っている。そして、販売するシーンになると親戚の人の顔を見上げ「欲しそうな目で見る?」しばらくすると「ほしいのか?」と聞いてくれる。このタイミング、子供なりの「導入」と「誘導」でした。

 

「十徳ナイフ」の名のごとく他にも色々付いているのですが、メインは「ナイフ」と「ガラス切り」の二つで、もう満足でいっぱいでした。しかし、ガラス切りはそうやたらと家の中のガラスを切るわけにも行かずでしたので、ガラスビンの胴に切り込みを入れて切ると言うよりは割るが正しいような事で使っていました。そしてこのビンの割れ方をみて、板ガラスではなく丸いビンでも、うまく割ると綺麗に割れることを学んだことが下町の悪ガキの勉強でした。ちなみにうまく割り、ヤスリで縁を磨くと「コップ」を作ることが出来ます。