昭和30年初頭、子供が買える贅沢な逸品として「鯨カツ」があった。

 

昭和30年初頭、私がまだ小学校へ入学する前のお話になります。この時代、子供ながらに「肉」には憧れがありました。子供ながらに「肉」の「価格構成」を肉屋さんの揚げ物で判っていたような変な認識がありました。それは揚げ物の価格で安い順に覚えていたからでした。
子供の小遣いでも買うことが出来た「鯨カツ」は、少し独特の匂いがありましたが本当に美味しかったです。薄くスライスされた「鯨肉※下処理(香辛料で匂い消した)」にパン粉をまぶしラードで揚げたできたてに「ウスターソース」をかけてもらい近くに公園で食べた至福の時間の思い出です。

 

一番安い揚げ物は肉ではないのですが「ポテトフライ※3ヶ=5円位」、「コロッケ※1ヶ7円位」、「ハムカツ※1枚10円」、「鯨カツ※1枚15円」、「牛カツ※1枚20円」、「豚カツ※1枚35円」、鶏肉は確か豚肉と同等の値段だった気がしますが、まだ「唐揚げ」等は下町の肉屋さんには無く「鶏もも肉」の「照り焼き」で非常に高かった記憶があります。我が家では「鶏もも肉」の「照り焼き」はクリスマスの時にしか食べられなかった。

 

あたり前の話ですが、大人になって判った事が沢山ありました。先の「鶏肉」、当時は「卵」を収穫するための「鶏」が主で、今のように「食肉」として「促成飼育」の「ブロイラー」等はまだ無かった時代でした。それと「豚肉」が高かったのも理由は色々あるようなのですが、肉屋さんから聞いた話で「匂い」が影響してきた事を聞いたことがありました。それは「牛肉」は独特の「獣臭※けものしゅう」があり、「豚肉」は無かった事が需要と供給のバランスで価格構成が変わっていたと言う事でした。

 

豚肉はその点でそのようなこともなく、癖もないため人気があったのでしょう。豚、牛、鶏、肉には色々な「部位」がありますが、豚肉の中でも特に高級品となっていたのが「ヒレ肉」でした。個体の中でも非常に量が少なく、肉に癖がなくとても「柔らかく」希少な部位のため贅沢品になっていたようです。余計な話ですが高価格品の「豚肉」、ラーメンには欠かせない「チャーシュウ」があります。贅沢品の豚肉でも当時のラーメンには必ず入っていました。

 

しかし、覚えているのは今のような「煮豚※肉をロールにしてタレで煮込んだ」ではなく赤く色づけされた「焼き豚※今も横浜の中華街にある」が多かった。それは大人になって、私自身が調理人(12年間)をしていて気が付いたこと、当時、高額だった「豚肉」でしたが「チャーシュウ」に使うところは「三枚肉※バラ肉」ですが、精肉になった豚肉を色々な部位に分けるために「さばく※掃除」作業があります。

 

このときに「精肉部分」と「くず肉※破棄含む」とに分ける作業を行います。今では、本当に無駄なく、細かな部位までも「食用」として使用できるようになりましたが、当時の「養豚」、「精肉作業」共に知識も技術も確立されいなかったため、「三枚肉※バラ肉」の所は「脂身」が多く皮ギリギリまで使用していたようです。故に、ラードの塊のような「三枚肉」ですので、タレに漬け込み「壺焼き」の「釜」のようなもので針金に吊し「釜焼」で余計な油を落としながら焼き上げた物が「焼豚」と呼ばれていたようです。

 

だからこそ手は掛かってていますが「価格的」には採算がとれていたようです。ちなみにほぼ「外注」で出来た物を用事の「ラーメン屋さん」では使用していたようです。時代の流れでどこからか「煮豚」が主流になってしまいました。「焼豚→煮豚=チャーシュウ」が今の時代に合っているのでしょう。少し余計なお話でした。