竹の子の皮と梅干しは、素朴なおやつ代わりだった。

 

 季節は竹の子のイーズンに入りました。この時期に思い出す幼い頃の「竹の子の皮と梅干しのおやつ」。私の尾なあ次世代の方でも「?」となることでしょう。当時は、この時期にしか味わうことが出来なかった、下町ならではの「代用おやつ」でした。何とも貧乏くさい材料の組合せですが、以外と美味く誰がこの発想を持って作り上げたのか不思議な組合せです。

竹の子の皮と梅干しの代用おやつ 昭和30年代、ある日の夕方八百屋の店先に山積みになった竹の子の山が出来る時期のお話です。色とりどりの色々な野菜が並んでいますがひときわ目立つ存在の竹の子が置かれます。大きな竹かごのに入ったそのままの姿で店先に並び、買い求める側のお客の人たちはその籠の中から自分の好みの大きさ、色合い、形を選び購入していきます。

 その脇には、あく抜きされすぐに料理して食べられる水煮の竹の子もあるのですが、自然そのままの方を選ぶお客さんが多くすぐに籠は空になります。すると八百屋も商売ですから、すぐ次の竹の子の入った籠を同じ場所に並べます。家のすぐ近くにある八百屋さんなので、店先に色々な野菜が並ぶのをいつも見ていた私でした。

 この竹の子が並ぶときには、母親にいち早く伝えに行きます。その訳も母親は理解しているのですぐに買ってくれます。何より買っても、すぐには調理しません。その理由は、このタイトルに書いた竹の子の皮を使った「代用おやつ」にするためです。兄弟五人の為に、本体よりも皮を優先し竹の子の皮と梅干しで「代用おやつ」を作ってくれるのです。

 当時はこの時期にしか皮付きの「竹の子」は八百屋さんに並びません。何より普通捨ててしまう「皮」です。それも竹の子の皮には細かな「毛」の様なケバケバした物が沢山着いていますのでやっかいです。子供の私は、母親が竹の子の皮を下の方からむいていくの見ています。

 そして竹の子の中程の皮の所を数枚とっておき、本体の竹の子はあく抜きのため鍋で茹でる為コンロに火をつけ鍋の中に入れます。しばらくすると取り置いていた数枚の竹の子の「皮」を塩で少しこすり、今度は皮の表面に塩が残ったまま皮の毛の着いている側を包丁の背で、産毛のような所をこそげ取るように何度かこすり産毛が口に当たらないよう下処理し、水洗いしたものが完成品になります。

 少し柔らかくなった竹の子の皮の中に「梅干し」を入れ、皮を適当な三角に包んで三角の少し白色の頂点の所から口でチュウ チュウと吸うのです。最初の頃は梅干しの塩けが強く塩っ辛いのですが、しばらくすると竹の子の皮のうまみが混ざり合ってきて独特な「うまみ」と混ざり合って何ともいえないうまさを感じることが出来ます。

 こんな物ですが「おやつ」の代わりとして夕飯前の一時の口寂しさを和らげるための代用として食していました。ちなみにこの「代用おやつ」ですが充分に吸い尽くし、梅干しの種もすてたあとに再度梅干しを中に入れて翌日分として冷蔵庫(当時は電気ではなく氷)にいれて翌日再度味わうためにしまっておくのです。

 一晩寝かせると、また、違ったうまみがでてさらに美味しくなるのです。本当に貧乏くさいお話ですが、これもこの季節、下町で普通におきていた光景です

 番外の物で「小なす」のぬか漬けも夏だけの「代用おやつ」としてありました。普通に考えても何か変に思えることでしょう。ですが、これも美味しいのです。ナスのヘタの方を浅く切り落とし、お行儀悪いですが口にくわえながらナスをよくもみます。注意点として、絶対に嚙んではダメです。くわえて良くもみほぐし、これもチュウチュウと吸うのです。すると最初はしょっぱいのですが、だんだんと甘みが加わり美味しくなるのです。

昭和30年代ある日の夕方、貧乏くさい出来事でした。

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